ひがしはら内科眼科クリニック
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目の病気
季節性のアレルギー性結膜炎(花粉症)
①アレルギーとは
そもそも、生体が感染症などに対して抵抗力を獲得する現象を「免疫」といいますが、この免疫は、生体が微生物などの外敵と戦うなかで、自己と非自己を識別して、非自己を排除しようとする防衛反応のことを指します。この防衛反応が過剰になって病的症状が現れることを「アレルギー」といいます。 アレルギーの反応は、Ⅰ~Ⅳ型反応があります。アレルギーの原因物質のことを「アレルゲン」といいますが、目のアレルゲンで問題となっているのが花粉やダニ、ハウスダストになります。花粉症は季節性に飛散している花粉に対するアレルギー反応であり(季節性アレルギー性結膜炎)、ハウスダストとダニ、埃などいつも暴露されている物質に対するアレルギー反応を通年性アレルギー性結膜炎といいます。
②アレルギー性結膜炎・鼻炎の発症メカニズム
まず、花粉などのアレルゲンが眼や鼻から入ってきて眼表面あるいは鼻粘膜に沈着します。速やかに、花粉が貪食細胞に取り込まれて、それをTリンパ球が認識して活性化します。活性化したTリンパ球はBリンパ球に花粉に特異的なIgE抗体を産生させます。このIgE抗体が肥満細胞の膜上に結合して、再び花粉が侵入したときに、肥満細胞上のIgE抗体に結合し、肥満細胞が活性化されて細胞内に含まれる炎症やかゆみを起すヒスタミンなどの化学伝達物質が放出される結果、目の痒み、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状が起こります(図1)。
③増加する花粉症患者
現在、花粉症患者は増加の一途をたどり、日本人の15~20%を占める有病率の高い疾患となっています。この背景には、日本列島は山が多いこと、そのために花粉症の原因となる植物が多く存在することが影響しています。特に、戦後に植林したスギが花粉の生産適齢期を迎え、多量の花粉を飛散するようになりました。急増している花粉症患者のうち、スギ花粉症患者の占める割合は80%とも言われています。スギ花粉以外には、ヒノキ花粉が重要視されています。スギは日本全国に広く植林されていますが、近年は、スギよりもヒノキの植林面積が多くなってきています。ヒノキはスギよりもやや遅れて植林されたために、成長して大量の花粉を生産するのはこれからになると考えられています。 また、最近のアレルギー性疾患の増加の背景には、地面のアスファルト化や、自動車の排気ガスなどの大気汚染物質の増加など環境の変化も大きく関与していると考えられています。都市部では地面がアスファルトですので、一旦花粉が地面に落ちても吸収されることはありません。例えば、朝方、山間部からすぎ花粉が飛んできて再び3時頃に地上から上昇している訳です。これを都市部に起こる「二次飛散」といっています。さらに、大気汚染物質が、目の中にはいってきたアレルゲンに対する反応を増強させる働きがあるとれています。そのために、都会にいると花粉は少ないはずなのに花粉症患者が多くなるという逆説的な現象が起こるのです。
④目の症状
花粉が飛散する時期に症状がでますが、スギ花粉であれば、その時期は2月~4月あたりです。症状がでる期間は比較的短いですが、目や瞼の痒み、流涙、眼脂、目の異物感、白目の充血、などの症状が出るために日常生活にも支障を生じます。中でも目の痒みはアレルギー性結膜炎患者の約95%に見られ、非常に激しいのが特徴で、眼をこすったり、かいたりしていると、白目が浮腫を起こしてブヨブヨになることがあります。眼のかゆみは、単に眼をこするだけにとどまらず、眼をひっかいたり、叩いたりして重大な合併症をまねくことがあります。場合によっては、視機能にも重大な影響を及ぼしかねません。また、くしゃみ、鼻水、鼻閉などの鼻症状の合併を生じやすいです。
⑤花粉症の原因を知る
まず、自分がどのようなアレルゲンで花粉症が発症しているか把握することが治療の第一歩になります。厳密には血液検査を行って、自分がどんなアレルゲンに反応しやすいか調べないといけませんが、花粉症であれば、去年の同じ時期はどうだったか思い出してみるのも一つです。その時期に飛散している花粉に反応している可能性が高いです。アレルゲンが分かると、スギ花粉症のように、あらかじめ発症時期を予測することができますので対策が立てられます。 症状が発症してから点眼薬や点鼻薬、内服を開始するのも良いですが、まずは、アレルゲンを体に入れないことも重要です。花粉飛散予報をチェックして、飛散量が多い日には出来限り外出を控える、外出時にはメガネとマスクを着用することも大切です。普通のメガネであっても裸眼で外出するよりは、目に入る花粉量を約1/3程度に減らせることが知られていますし、プロテクター付メガネであればもっと有効です。帰宅時には、玄関先で衣服に付着しているであろう花粉を払い落として、花粉を家の中に持ち込まない、帰宅後すぐに洗顔することも有効です。
⑥花粉症の治療
症状が発現してからの治療ももちろん大切ですが、花粉飛散のピーク2週間前から治療を開始する「初期療法」が有効とされます。花粉症の治療は、眼科領域では抗アレルギー点眼液が第一選択となります。その作用には2つあり、肥満細胞の膜安定化作用により肥満細胞の脱顆粒を抑制してアレルギー反応の初期段階を抑えること、そして、化学伝達物質であるヒスタミンの受容体に拮抗して症状を抑えることです。また、防腐剤無添加の人工涙液点眼を頻回に行い、涙の中の炎症物質の濃度を希釈する、あるいは花粉をウォッシュアウトするのも効果的です。
⑦花粉症とコンタクトレンズ
コンタクトレンズを装用すると、裸眼の時に比べて涙のターンオーバー(循環)が悪くなります。その結果、レンズ表面に花粉が長時間とどまり、花粉がアレルゲンとして認識されやすくなります。また、季節性のアレルギー性結膜炎を有する患者では、涙液中にタンパク質が増えますので、コンタクトレンズが非常に汚れやすくなります。比較的分子量の大きなタンパク質はレンズ表面に付着するため、そこが足場となって、さらなる花粉や微生物の吸着を増強させ、眼のアレルギーを悪化させます。
花粉症の既往歴をもつ方は、無理なコンタクトレンズ装用を避けて、まずは眼科を受診し点眼治療を開始するとともに、コンタクトレンズ装用の継続が可能かどうか眼科医の指示を仰いでください。基本的には、目のアレルギーが重度であれば、無理なコンタクトレンズ装用は控えなければなりません。レンズの汚れも花粉症に影響すると言いましたが、レンズの汚れ対策というと、擦り洗いをイメージされるかと思います。しかし、イオン性素材のソフトコンタクトレンズはタンパク質を吸着しやすく、いったんレンズに付着したタンパク質は電気的な力で吸着しているため、擦り洗いをしても効果が期待できません。アレルギーの程度が軽い場合に限って、花粉症の時期だけ非イオン性の1日使い捨てコンタクトレンズへ変更するという対策がポイントです。